労働者が病気等により働けない場合でも、それが労災に基づくものであるときは、使用者は解雇をすることができません(労基法19条1項)[1]。このような制限がされている趣旨は、労働者が労働災害補償としての療養のための休業を安心して行えるよう配慮したところにあります[2]。
では、解雇ではなく「自然退職」など別の名称であればどうでしょうか?

会社の就業規則では、病気等のための休職期間が設けられ、それでも復職可能にならない場合には自然退職の扱いになるという規定が設けられていることがあると思います。
しかしながら、最近の高裁レベルの裁判例[3]では、業務上の疾病にかかり療養のために休業していた期間にされた自然退職扱いは、労働基準法19条1項の規定に違反し、効力を生じないと判断されました。
従前の裁判例でも同様に判断されたものがありました[4]。
私個人としては、このような判断は適切と考えています。
雇用契約が途中で終了する場合、大きく3つに分けられます。
①会社からの一方的意思表示によるもの(解雇)
②労働者からの一方的意思表示によるもの(解約申入れ)
③会社と労働者の合意によるもの(合意退職)
「自然退職」のように名称が変わっても、会社から一方的に雇用契約が終了させられるのであれば、実質は解雇と異なりません。そのため、労基法19条1項の規定の潜脱を防止するためにも、上記のような裁判例の判断は適切と考えています。
ところで、自然退職について定めた就業規則がいつ適用されるのでしょうか。それは、業務と関係ない私傷病の場合です。
この場合、就業規則の定めに従って、自然退職となります。
そのため、労働者が休業している場合、それが労災か私傷病のいずれに該当するかというのは非常に重要です。
理由を限らず、意に反して退職させられそうになっている場合、弁護士に相談することを強くお勧めします。
2026年4月1日 弁護士 矢野 拓馬
[1] 正確には、療養のため休業する期間及びその後の30日においての解雇が禁じられる。
[2] 大阪高裁平成24年12月13日判決(労判 1072号55頁)。
[3] 仙台高裁令和6年2月20日判決(判時2623号103頁)。
[4] 東京地裁令和5年12月7日判決(労判1336号62頁)など。