心当たりのあることでもないことでも、不幸にして、自身や親族や知人が逮捕されてしまうということは、ないわけではありません。
犯罪をしたと疑われ、逮捕・勾留をされた場合には、すぐに捜査機関による取調べ等の捜査が開始します。取調べにおいては、捜査機関が作成する「供述調書」が作成されるのが通例です。一度「供述調書」が作成されてしまうと、事実と異なることが記載されてしまった場合であっても、その内容について後から争うことが難しい場合が多いです。
そのため、逮捕・勾留をされた方は、出来る限り早い段階での弁護士との接見(※逮捕・勾留されている方と弁護士が面会することを「接見」といいます)を行い、弁護士からのアドバイスを受けることが重要となります。
ご自身が逮捕されてしまった場合、まずは、弁護士を接見に呼ぶことをお勧めします。知り合いに弁護士がいるなど、特定の弁護士を呼びたいとき、警察署の留置担当者に、その弁護士を呼ぶよう伝えてください。刑事訴訟法においては、特定の弁護士を指定して弁護人の選任を申し出ることができるとされています(刑訴法78条2項、216条、209条 ※既に弁護人が選任されているときは除かれます)。
また、ご自身ではなく、親族や知人が逮捕されてしまったというような場合でも、弁護士に連絡して、接見を依頼することができます。
当事務所でも刑事弁護に対応しており、逮捕された方の親族などからのご相談、接見の要請にも対応しています。
では、知り合いに弁護士がいない場合はどうすればよいでしょうか。
私としては、当番弁護士を依頼することがよいと考えています。
「当番弁護士」とは、各弁護士会が、刑事事件で逮捕・勾留により身体拘束されている人に、無料で1回に限り弁護士を派遣する制度です[1]。弁護士会に連絡し、派遣要請をすることで、弁護士会が当番弁護士を手配してくれます。滋賀弁護士会の場合、平日の営業時間内であれば担当者に電話し、平日の営業時間外または休日であれば留守番電話に必要な情報を入れることで、要請することができます[2]。
また、当番弁護士は逮捕された被疑者本人が警察を通じて要請することもできます。当番弁護士制度は各弁護士会が自主的に設けている制度ですが、長年にわたり安定的に運用され、全国的に定着していることなどから、警察官には当番弁護士制度の存在を前提として、被疑者の弁護人選任権が損なわれないようにすることが求められていると解され、当番弁護士の派遣要請を受けた警察官はできる限り速やかに弁護士会にその旨を通知する義務を負うとされています[3]。
では、当番弁護士は無料とはいえ一度きりということですが、この点について解説していきます。まずは、逮捕された場合の刑事手続について説明していきます。
当番弁護は、逮捕された段階でのサービスです。
当番弁護士と接見してみて、その弁護士に依頼したいと思ったら、その弁護士と委任契約を締結し、その事件についてサポートしてもらうことができます(契約して刑事弁護人になってもらった弁護士のことを「私選弁護人」といいます。)。
もし、着手金が払えないなどの理由で私選弁護人を選任することができない場合、希望すれば勾留の段階で国選弁護人を選任してもらうことができます(勾留される前に釈放されると、国選弁護人は選任されません)。
そのため、当番弁護が1回きりのサービスといっても、身体拘束が継続する場合、弁護士が事件に関与するのが1回だけというわけではありませんので、安心してください。
当事務所では、当番弁護の割り当て以外でも、私選弁護のご依頼に対応しています。近江八幡市、東近江市、彦根市、野洲市など、滋賀県の刑事事件でご依頼したい方がいらっしゃいましたら、当事務所にご相談ください。
2024年9月2日 弁護士 矢野 拓馬
弁護士 徳山 紗里
[1] 滋賀弁護士会ホームページ(https://shigaben.or.jp/legal_advice/duty/)2024年8月16日閲覧。
[2] 同上。
[3] 大阪府警及び大阪弁護士会の事案ではあるが、大阪地裁令和4年12月23日判決(判タ1507号116頁)。