今回は、趣向を変えて、司法試験の過去問について検討していきます。
法曹以外の方もご覧になっていると思うので、司法試験制度そのものについて簡単に説明します。
司法試験は、短答式(マーク式)試験と論文式(論述式)試験から構成されており、両者の合計点で合否が判定されます。
次の問題は平成19年(2007年)新司法試験の短答式試験(公法系科目)[1]第12問です。皆さんも一緒に考えてみてください。
政党に関する次のアからエまでの各記述について,それぞれ正しい場合には1を,誤っている場合には2を選びなさい。
(ア~ウ 省略)
エ. 法律上は,政党法を始めとして,政治資金規正法,政党助成法,政党交付金の交付を受ける政党等に対する法人格の付与に関する法律,公職選挙法などの法律で,それぞれの法律の目的に応じて政党に関する規定が置かれている。
これは正しいでしょうか、誤っているでしょうか。正解は「誤っている」です。どこが誤っているかというと、「政党法」という名称の法律は存在しないという点です。
この説明を聞いて、驚いたり、人によっては怒りを覚えたりするかもしれません。実際、「司法試験 政党法」で検索するとこの問題に関する指摘をしているものが多く発見されますし、中には「悪問」と評している人もいます。「伝説の」というのは、私がこの記事で勝手にそう呼んでいるだけですが。
では、この問題は、「政党法」という法令の有無という知識を問う問題で、本当に悪問なのでしょうか。私は、そうではないと考えています。
ある憲法の教科書[2]を見ると、政党に対する法規制の在り方は、(a)一般的な単行法によるものと、(b)個別的立法によるものがあり、日本では、政治資金規正法や政党助成法などによって規律されており、後者(b)に該当します。
この内容を前提に先ほどの問題を考えると、政党法の有無という単なる知識ではなく論理で解く方法は2通りです。すなわち、①政党法という単行法による規律と個別立法による規律は法体系として相容れないからこの選択肢は誤りである(法制度そのものの矛盾)、②日本は個別立法により政党を規律する体系であるから一般的な単行法である政党法が存在するはずがない(日本の法体系における矛盾)、といういずれかの考え方ができれば、この問題を正解することができます。
そして、引用欄でも示しているとおり、平成19年(2007年)の司法試験の時点ですでに発行されていた書籍に記載されている内容から解答可能ということになります。
私は当時の司法試験委員から話を聞いたわけではないので、真の出題意図というのはわかりません。本当に「政党法」の有無という知識を問いたかったのかもしれませんし、全く別の意図があったのかもしれません。
ただ、その問題を、私がこの記事で解説したとおりに考えると、必ずしも悪問とは言えない、むしろ良問ではないかと思います。
2026年8月22日 弁護士 矢野 拓馬
[1] https://www.moj.go.jp/content/000006371.pdf(2026年8月21日閲覧)。
[2]大石眞『憲法講義Ⅰ(初版)』(有斐閣、2004年)72頁。