離婚・男女問題

面会交流ができなくなる場合

 子供と別居している場合でも定期的に面会交流をすることができるというのはよく知られていることかと思います。 
 離婚後の面会交流については民法766条で、離婚前の別居状態についても判例法理[1]で認められています。

 双方の合意や調停での取り決めなどに沿って、面会交流が行われることになります。

 一方の親との離別を経験した子にとって、面会交流は、どちらの親からも愛されているという安心感を得ることができ、父母の不和による別居に伴う喪失感やこれによる不安定な心理状態を回復させるなどの効能があると説明されています[2]。

 では、離婚事由や離婚後の状況がどうであれ、面会交流は実施しなければならないのでしょうか。

 少し前までは、調停の実務の現場において、禁止制限事由が認められない限り必ず、特に直接交流を実施すべきであるという方向で調停運営が行われていたことがあったようです[3]。このような調停運営については、原則実施論などと呼ばれていますが、平成25年から29年にかけて、全国の家庭裁判所実務の大勢であったとの分析もされています[4]。

 しかしながら、このような運営は、禁止や制限をする事由が認められない限り必ず、特に直接の面会交流を実施すべきであるという方向で調停運営が行われ、その結果、同居親に対して配慮が十分ではない調停運営となっていたとの批判がありました[5]。

 そこで、現在の調停の現場においては、同居親への聴取の在り方など、運営について振り返りをして、ニュートラル・フラットな立場、すなわち同居親と別居親のいずれの側にも偏ることなく、また、先入観を持つことなく、子の利益を最優先に考慮するという立場から、よりきめ細かで丁寧な傾聴や説明をするというような動きが出てきているようです。

 このモデルにおいては、6つのカテゴリー(安全・子の状況・親の状況・親子関係・親同士の関係・環境)を中心に、主張背景事情を把握し、課題を把握し、それを当事者と共有し、課題の解決に向けた働き掛け・調整を経て、その働き掛け・調整の結果の分析・評価をし、必要があればこの過程を繰り返し、なるべく実態に合った面会交流の在り方を見付けようというものとされています。

 面会交流の禁止や制限はどのようなものでしょうか。

 子の利益に反する事情があれば、面会交流は禁止・制限されると説明されます[6]。
 子の利益に反する事情の典型的なものとして、①連れ去りのおそれ、②虐待、③子の拒絶、④DVが挙げられます[7]。
 このような事情があると、直接の面会交流をすることはできず、間接交流(手紙や写真やプレゼントの送付などに限定されること)になったり、面会交流そのものができないなどということになったりします。

 では、子が親に否定的な感情を抱いている場合には、直接交流をすることができないのでしょうか。ここで、裁判例[8]を紹介します。

 この事件では、元夫婦に長男(中1)・二男(小4)・長女(小1)の合計3人の子がいたところ、離婚の際に、子らの親権者はいずれも母親と定められ、母親と同居していました。
 父親は、家庭裁判所に面会交流調停を申し立てたものの、まとまらなかったため、審判に移行しました。
 家庭裁判所の調査の際、子らは父親について、「遊んでくれない。」(長女)、「毎日寝ていて、相手してくれなかった。」(二男)、「土日とか全然遊んでくれない。」、「テストとか見てくれない。」、「自分の子どもだし、ちゃんと見てほしかった。」(長男)などと不満を述べ、家事についても「手伝いもしない。」(長女)、「洗濯とかしないでゴロゴロしてた」(二男)、「洗濯物を畳んだりせず」(長男)などと不満を述べていました。
 そして、面会交流の実施について、長男と二男は、「会うのが嫌」などの否定的な意見を述べていました。

 このような事実関係で、第一審の静岡家裁富士支部は、次のような理由で、直接交流を制限し、間接交流によるべきだと判示しました。

 未成年者らに、父母の離婚や紛争と別に、非監護親である申立人(=父親)が未成年者らを見捨てたものでなく、愛情の下にあることを実感する機会として直接交流を目標とするべきであるが、未成年者らが申立人との面会交流について上記否定的な意向を述べている現時点においては、申立人が未成年者らに対し、間接交流の方法によって親として愛情を有していることを伝え、直接交流に向けた父子間の信頼関係回復の機会を設けることが先決と解される。

 これに対し、東京高裁は、次のような理由で原審を破棄し、試行的面会交流の実施を含んで検討するよう差し戻しました。

 同居時の抗告人(=父親)の未成年者らに対する関与の程度が高いとはいえず、そのことにつき未成年者らが不満を抱いている様子が看取されるが、同居時に抗告人の未成年者らへの関与の程度が低かったとしても、そのことは、別居後の直接交流を否定すべき事情には当たらないというべきであり、かえって、抗告人と相手方(=母親)及び未成年者らとの別居後は、未成年者らが抗告人と接する機会は面会交流等の場面に限られることになり、そのような限られた関与の機会は子の福祉の観点から重要であるといえる。
 家事については、通常、未成年者らと抗告人との間で分担が問題となる性質のものではなく、専ら相手方と抗告人との間の分担の問題であると考えられること、すなわち、抗告人の家事の分担が十分でない場合に不満を抱くのは相手方であると考えられることからすると、未成年者らの上記理由に基づく消極の意見についても、そのような相手方の不満の影響を受けたものである可能性が高いものと考えられる。これに加えて、二男が、調査官に対し、相手方が未成年者らに抗告人と会ってほしくないと思っていると述べ、長男も、抗告人の相手方に対する態度が嫌である旨を述べていることなどからしても、長男及び二男は、相手方の面会交流に対する否定的な考えや抗告人に対する対立的感情の影響を受けて、抗告人との面会交流につき消極の意見を述べている可能性が高いものと考えられる。

 原審で面会交流を制限する審判が出て、抗告審でこれが破棄されて差戻しの判断がなされたので、私としてはこのような件が限界事例と言えるのではないかと分析しています。

 「面会交流」という名目で裁判所から認められたとしても、それが間接交流の方法である場合、面会交流を求めている別居親からすれば、満足と感じられないことが多いです。

 実際、立法過程において、間接交流となると、子どもが大きくなって親を探しに来るようになるまで親子断絶のようになってしまうという意見もあがっていました[9]。

 他方で、別居親が子を虐待したなどの過去があり、直接の面会交流を子の利益のために阻止すべき場合があることも確かです。

 面会交流を実現したい場合、または、面会交流の要求を阻止したい場合のいずれであっても、弁護士に委任して、法に基づいた適切な解決をすることを強く推奨します。

 2026年10月3日 弁護士 矢野 拓馬


[1] 最高裁平成12年5月1日決定(民集54巻5号1607頁)。
[2] 武藤裕一・野口英一郎『離婚事件における家庭裁判所の判断基準と弁護士の留意点』(新日本法規、2022年)138頁。
[3] 法制審議会家族法制部会第6回会議 議事録6頁(https://www.moj.go.jp/content/001357643.pdf)2026年10月2日閲覧。
[4] 前掲・注2 武藤・野口『離婚事件における家庭裁判所の判断基準と弁護士の留意点』139頁。
[5] 前掲・注3 法制審議会家族法制部会第6回会議 議事録7頁。2026年10月1日閲覧。次の2つの文についても同じ。
[6] 前掲・注2 武藤・野口『離婚事件における家庭裁判所の判断基準と弁護士の留意点』141頁。
[7] 同上142頁。
[8] 東京高裁令和7年5月29日決定(判タ1544号70頁)。原審は静岡家裁富士支部令和7年2月21日審判(判タ1544号73頁<参考収録・原審>)。
[9] 前掲・注3 法制審議会家族法制部会第6回会議 議事録25頁。2026年10月2日閲覧。

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